前回の続きです。まだ読んでない方は前回から読んでいただければ理解が深まると思うので読んでいただければ幸いです。
白鳥 由栄に抱いた感想
白鳥が2回目の殺人を犯した際の官選弁護人である斎藤忠雄氏による証言が私の抱いた感想の肝であったので紹介します。
〜 たしかに彼は、ドロップ・アウトした人間で脱獄ではいろいろと世間を騒がせました。しかし白鳥君が刑務所を逃げたのは、こう、なんというのか、脱獄の哲学・・・・・・それも純粋に役人に対する反抗心から出ているんだな。それと”人間の作ったものは必ず壊せる”という信念、それは、まあ、彼なりに脱獄を正当化する方便であったかもしれない。だが別の意味では監獄改良を身を以て実践してきたわけだから、それなりに彼の脱獄は意義のあったことで、私は評価していますよ。秋田の時はたしか、白鳥君が容れられていたのは鎮静房でしたが、あの脱獄の一件以来、廃止されたはずなんです。 〜
前回の記事でも述べましたが、脱獄の動機は主に収監時の恐怖心や役人の横暴な態度に反抗するためであり、根は真面目で人情味あふれる一面も持ちあわせている印象でした。そんな彼を「脱獄」というリスクある選択をせざるを得ないような過酷な環境での収監、役人の横暴な態度はいくら体罰等が比較的許容されていた昭和当時の価値観であろうが、また、許し難い罪を犯した受刑者であろうがやり過ぎな印象でした。実際、白鳥も一人の人間として扱ってくれた看守が当番の時や刑務所では脱獄を試みておらず、脱獄時以外にも過ごした他の刑務所では精神的に安定していたとのことです。
このことと似た経験が私自身にもあり、昔仕事で間違いを指摘された時に必要以上に激しく叱責されたり辱めを受けた際は改心したり同じ失敗をしないよう対策しようとする一方、自分にも非があるとはいえ心のどこかで素直に従うことができない気持ちになり、反抗的な態度が出ていた時期もありました。
一方で、その後別の部署へ移動となった時、優しくされたり存在を認めてもらえたと感じたため(仕事の出来不出来は別として)精神的に安定し、仕事に楽しさを見いだすことができました。
この経験から、斎藤氏がおっしゃる通り、秋田の鎮静房が廃止されたのは受刑者も一人の人間として扱うことで社会の一員であることを認識させ社会復帰への足がかりとしたり、脱獄といった誰も得しない行為の抑制になっていると感じたので、廃止の目的はこれではないかと感じました。
我々が白鳥 由栄から学べること
前回記載の通り、受刑者の「脱獄」という目的を防ごうとあらゆる手を打ってくる絶望的な環境でさえも、「人間が作ったものは必ず壊せる」という強い信念を持っていたとのことで、「必ず脱獄してみせる」という粘り強さ、頭のキレの鋭さも窺え、「何をやるにも必ず方法はある」という教訓を示してくれたように感じます。
一方で我々のように普通に生活している人間は何か目標を持った時、それを達成するための行為は誰かから強制的に制限されたり止められたりすることは余程の事情がない限りないでしょう。足を引っ張られたり笑われたりといったことがあったとはしても、それが直接行動できない理由にはならず、行動に移せない時は大抵の場合、他人の目を気にしていたり、集中を欠いて手が止まったり、快楽や誘惑に負けてしまったりと自分次第で改善できる問題であることがほとんどではないでしょうか?私がまさにそれで、今でも分かってはいるものの完全に克服できておりません。
しかし現代はありがたいことに、何かに能動的に取り組もうと思った時はインターネットに気軽にアクセスできたり、先人たちが血の滲む思いをした実体験を通じて得た教訓やノウハウを記した書籍を安価で読むことができたりと、欲しい情報やヒントが溢れているので何をやるにも勉強したり実行に移すハードルは格段に下がっています。その気軽にインターネットにアクセスできる環境が快楽や誘惑のアクセスに一役買ってる側面もありますが、使い方次第では強力なツールになるはずです。
これを読んで「自分はまだまだやれることがある」、「少しずつでも前に進もう」と思っていただければ嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました!
↓(再掲)今回参考にさせていただいた書籍

